◎逆説性不眠!
不眠症の中には面白い現象があります。
それは自分が不眠症であり、
毎日眠れないと訴えいる人が、
実際にはよく眠っていることがあります。
ある人はもう何年も眠っていないと訴えますが、
何年も眠らないということはあり得ません。
その前に死んでしまいます。
実験によると、2週間程度眠らないと、
脳が破壊されて死に至ります。
眠るということは、
脳を休めるためでもあります。
つまり脳が休まらず、
負担が大きくなって最終的に死に至るのです。
つまり何年も眠っていないということは
あり得ないのです。
このように科学的に測定すると
十分に睡眠をとっているにもかかわらず、
自覚的にはほとんど眠れなかったと述べる現象を
逆説性不眠
と言います。
これは特に不眠が慢性化した人に
起きる症状です。
この逆説性不眠は
独立した病態であるかどうかについては
議論があるものですが、
不眠症患者の中には多い症状なのです。
そして悪いことに、
本人は本当に眠れていないと思っているのです。
元々不眠症は身体的な影響がある病気です。
つまり眠れないことにより、
注意力が散漫になったり、疲労感が増したり、
そういったことが問題でしたが、
慢性化すると、
心理的な焦燥感が課題となります。
眠れないことによる焦り、緊張感、不安感などが
精神的、心理的に負担になっていきます。
このように考えると、
実際に眠れていても、眠れていないと考える
逆説性不眠は心理的負担があるという意味で、
通常の不眠と同様に治療の対象となります。
◎逆説性不眠はどうして起きるのか?
では逆説性不眠は
どうして起きるのでしょうか?
ある患者は主観的な睡眠時間は30分ですが、
機械で脳波を測定したら、418分寝ていました。
418分、つまり7時間寝ていたのです。
これは十分な睡眠時間だと言えるでしょう。
しかし本人の評価では30分です。
30分しか寝ていないと評価するのであれば、
睡眠時間は全く足りていません。
この主観と客観の差は何でしょうか?
これは時間認知機能の異常が関与しています。
時間認知機能は、
脳による認知システムによって決まってきますが、
ここで睡眠時間を認知することができます。
この時に睡眠時間を認知するシステムは
徐波睡眠の量によって時間を認知します。
徐波睡眠=つまり深い睡眠です。
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があり、
「レム睡眠」は浅い睡眠。
それに対して「ノンレム睡眠」は深い睡眠です。
このノンレム睡眠にも4段階あり、
そのうち3~4段階の睡眠は非常に深い睡眠です。
詳しくはこちらを参照してください。
http://kaitekisuimin01.com/archives/1101228.html
この時に脳が休みます。
この3~4段階のノンレム睡眠のことを、
脳波が緩やかになることから「徐波睡眠」と言い、
不眠症対策では特に重視する睡眠です。
簡単に言うと「ぐっすり寝る」のです。
実は逆説性不眠を訴える人は、
この徐波睡眠が少ない人なのです。
特に不眠の慢性化が起きている患者は、
逆説性不眠が起きるというのは、
不眠が慢性化した人は深い睡眠ができていない。
少なくとも実感できない。
そのために眠れていないと思い、
逆説性不眠を訴えるのです。
逆説性不眠は実際には寝ているのですが、
深い睡眠ができていない。
それは脳を休めるには不十分です。
逆説性不眠はそういう意味で、
脳からの悲鳴なのかもしれません。