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旅枕

明治時代には多くの外国人が来日した。
彼らの何人かはお雇い外国人と言い、
日本に先進技術を教えていった。

その中の一人にエドワードモースがいる。

彼は動物学者で、東京帝国大学でも教鞭を握った。


日本に初めてダーウィンの進化論を
体系的に紹介したのも彼である。


その彼の名を一躍有名にしたのが、
大森貝塚の発掘である。



その彼は日本の就寝文化についても
独特の解釈をしている。



彼はこう言っている。

「日本人は枕を持ち歩いて旅をする」


これは「旅枕(たびまくら)と言って、
木製の旅行用携帯カバンである。

これには引き出しがついていて、
櫛やそろばん、ロウソクなど身の回りの品が
コンパクトに収められている。


彼にはそれが不思議だった。


モースには
「日本には必需品は少ない」
と考えていた。


それはどういうことか?






万能の和室!

日本の和室には万能性がある。

必需品がほとんどなくても、
そこに少ない何かを持ってくると様変わりする。


例えばちゃぶ台を持ってくると、
そこは食堂になるし、

それを片付けると、くつろげる場所になる。

そして布団を持ち込むと、
そこは寝室になる。


彼は旅をする日本人を見て、

「ベッドごと旅をしているようだ」

と述べている。



枕を持参すると、和室は急に寝室に早変わりする。
その万能さをモースは指摘しているのだ。




アメリカでは寝室や食堂は分離されている。
また家族がくつろぐ部屋も別にある。

これはアメリカが広大な国土を持っていることと
関係がある。

つまり日本では国土が狭く、密集しているので、
コンパクトな作りをせざるを得ないが、
アメリカは広大な面積があり、
隣とも接していないので、多様な部屋を作れる。







納戸、押し入れ!

モースはまた、「押し入れ」にも強い関心を持つ。
このようなコンパクトで、それ故に万能な部屋は
他方で、押し入れのような部屋を必要とする。

押し入れは部屋についているものだが、
元々は納戸(なんど)と呼ばれる閉鎖空間だった。

納戸は外付けされているものだが、
それをもう少しコンパクトにして、
部屋に付属させたのが押し入れとなる。

ここには布団などを入れるが、
それは少数の必需品を入れることで、
部屋を万能に使う日本文化からすると、
必要不可欠のものである。

布団を出すと寝室になるということは、
「布団をしまう場所」も必要となる。

それが昔は納戸であり、のちに押し入れになる。

畳敷きの文化である和室。
これは素早く寝室にも様変わりすることが
求められている。

そのためには変化させるための小物を
収納するためのスペースを必要とする。


和室とは万能のモノ
そして少数の小物や必需品を入れ替えることで
素早く他の用途に利用できるもの。

エドワーズモースは和室をこのように捉えていた。